「車検はいつも店長さんにお願いしているから」。整備工場や中古車販売店では、お客様が会社よりも人を見て通ってくださる場面がよくあります。ありがたい話ですが、その店長が辞めた途端に電話が減り、車検の時期になっても入庫が戻らない。こうした顧客離れは、退職が決まってから引き継ぎ書を作っても防ぎきれません。この記事では、担当者の退職でお客様が離れる理由と、顧客の引き継ぎを「辞める前の数週間」に頼らず日頃から済ませておく方法を、整備工場と車販店の実務に寄せて整理します。
担当者の退職で顧客離れが起きる理由
自動車業界では、車そのものの記録はよく残っています。整備の明細、交換した部品、走行距離、次回の車検日。こうした車歴は整備システムに入っているので、店長が辞めても消えません。一方で、お客様と何を話したかはほとんど残っていません。「次はタイヤも見てほしいと言っていた」「奥さまの軽自動車も来年車検」「代車は小さい車だと困る方」。こうした話は店長の頭の中か、せいぜい卓上のメモにあるだけです。
店長が辞めると、残った社員はこの部分を一から聞き直すことになります。お客様の側から見ると、何度も通っているのに初めての客のように扱われた、という体験になります。日本カーネット提供資料に載っている利用者の声にも、「店長でないと分からないと言われ、6時間後に折り返しが来た」「車検は必ず出しているのに、店長以外ふさわしい対応をしてくれていないのが不満」「スタッフの入れ替えが多く、新人が入るたびに質問されるのが嫌だ」という声がそのまま並んでいます。
顧客離れの正体は「対応履歴の消失」
担当者の退職で起きる顧客離れとは、車の記録は会社に残っているのに、お客様とのやり取り(対応履歴)が退職者と一緒に消えてしまうことで起きる離反です。日本カーネット提供資料に引用されたAIDEMのビジネスマナーに関する意識調査では、2回目以降の利用で悪い印象を持った店について「二度と利用しない」が51.3%、「他が見つかれば二度と利用しない」が43.2%でした。合わせると9割を超えます。退職直後は、残った社員が経緯を知らないまま応対するので、この「悪い印象」が起きやすい時期です。お客様は店長個人を気に入っていたというより、自分のことを分かってもらえている状態を気に入っていた、と考えると対策が見えてきます。その状態を担当者の記憶ではなく会社の記録で作っておけば、誰が電話に出ても同じ前提で話せます。
| 会社に残っているもの | 担当者の頭にしか無いもの |
|---|---|
| 整備明細、交換部品、走行距離 | 次に頼みたいと言っていた作業 |
| 車検満了日、点検の予定 | 家族の車、乗り換えの時期の話 |
| 見積書、契約書、入金 | 値引きや段取りで約束したこと |
| 顧客の住所と電話番号 | 電話がつながりやすい時間、話し方の好み |
退職時の顧客の引き継ぎが間に合わない理由
退職の申し出から最終出社日までは、短ければ2週間、長くても1〜2か月ほどです。その間に担当していたお客様全員分の事情を書き出すのは、実際には無理があります。本人も有給休暇の消化や私物の片付けがあり、残る側も通常業務を回しながら聞き取ることになるからです。
人の入れ替わり自体は珍しいことではありません。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、1年間の離職率は全体で14.2%、一般労働者に限っても11.5%でした。10人の会社なら、毎年1人前後が入れ替わる計算になります。整備の現場はさらに人数が少なく、日本自動車整備振興会連合会の令和7年度自動車特定整備業実態調査では、1事業場あたりの整備要員数は4.36人です。専業の整備工場では整備要員の平均年齢が53.0歳と高く、退職は転職だけでなく引退という形でも必ずやってきます。
退職前の引き継ぎだけでは足りない理由
顧客の引き継ぎを退職が決まってから始めると、間に合うのは「名簿と車両の一覧」までで、お客様ごとの事情はほとんど移りません。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では一般労働者の離職率が11.5%、日本自動車整備振興会連合会の令和7年度調査では1事業場あたりの整備要員は4.36人です。4〜5人の職場で1人が抜ければ、お客様の窓口の2割以上が一度に入れ替わることもあります。しかも辞める本人は、自分がどのお客様と何を話したかを全部は覚えていません。思い出せるのは最近の分と印象に残った分だけです。引き継ぎ書を厚くするより、毎日の応対をその都度会社の記録に残しておくほうが、退職時に慌てずに済みます。退職の時点で引き継ぐものが、ほとんど残っていない状態が理想です。
お客様が店長でなく会社につく状態の作り方
目指すのは、コールセンターのように「誰が電話に出ても、来店されても、前回の続きから話せる」状態です。そのために要るのは、特別な接客術より、やり取りを残す習慣と、残したものを応対の瞬間に見られる仕組みです。考え方はお客様は店長でなく会社につくの項目でも紹介しています。
- 電話、来店、SMS、はがきなど、お客様との接点があったら1件ずつ記録する(日時、誰が、何の件で、次にやること)
- 記録は担当者個人のノートや携帯でなく、顧客と車両にひもづく会社の画面に入れる
- 見積書、伝票、入金、契約など、システム上の操作は自動で履歴に残るようにして、手で書く量を減らす
- 電話が鳴ったら、出る前に相手と直前の経緯が見えるようにする
- 月に一度、店長以外の社員が店長担当のお客様の履歴を読み、分からない点を聞いておく
何をどう書けばよいかは対応履歴とは何か、何をどう残すかで書き方の例を挙げています。エクセルの共有シートで始める会社もありますが、件数が増えると検索と同時編集で詰まりやすく、その限界は対応履歴をエクセルで管理する限界にまとめました。
「会社につく」状態の確かめ方
お客様が会社についているかどうかは、店長が休みの日に確かめられます。店長担当のお客様から電話があったとき、出た社員が名前を聞き直さず、前回の用件と次の予定を踏まえて30秒以内に本題へ入れれば合格です。日本カーネット提供資料の当社ITソリューション部調べでは、良い印象を持った理由として「誰が出ても対応のクオリティが同じで感じが良い」「説明しなくても前回の情報を踏まえて会話ができた」が挙がっています。反対に「誰と話しましたか」「担当に確認して折り返します」が続くなら、まだ店長個人についている状態です。店長が不在の日の応対を月に数件ふり返るだけで、どのお客様の履歴が足りないかが分かります。
退職が決まったときの顧客引き継ぎの手順
日頃の記録が十分でなくても、退職が決まった時点でできることはあります。順番を決めて進めると、取りこぼしが減ります。
| 時期 | やること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 申し出の週 | 担当顧客を一覧にし、次回の車検や点検が近い順に並べる | 法人客や家族で複数台ある顧客は1件にまとめて扱う |
| 1〜2週目 | 上位のお客様から、話したことと約束事を本人に履歴へ書いてもらう | 口約束の値引きや段取りは必ず書き出す |
| 2〜3週目 | 後任と一緒に電話か来店でごあいさつし、後任の名前を覚えてもらう | 全員は無理なので、入庫が近い順に絞る |
| 最終週 | 未完了の作業(見積の回答待ち、部品の取り寄せ中)を後任に付け替える | 次回予定の日付と担当を空欄のまま残さない |
| 退職後1か月 | 後任が履歴を見ながら応対し、分からなかった点を記録に足していく | 前任に私用の携帯で連絡しない |
最後の「私用の携帯で連絡しない」は、トラブルを避けるための線引きです。退職者に頼る仕組みのままだと、次の退職でまた同じことが起きます。お客様の側から前任者へ直接連絡が行く場合もあるので、あいさつの際に「今後は会社の電話で、誰が出ても分かるようにしてあります」と伝えておくと安心されます。
電話の対応履歴と通話録音を引き継ぎに使う方法
店長とお客様のやり取りの多くは電話です。電話は記録に残りにくく、残っていても「車検の件で電話あり」程度の1行になりがちです。通話録音は昔からある仕組みですが、社員の通話を後から聞き直す時間は実際にはほとんどありません。聞くのはトラブルが起きたときぐらいでしょう。
日本カーネットの通話録音×AI要約は、着信と発信を自動で録音し、AIが要約とテキスト化を行って、整備システム・整備ソフト DREAM POWER の顧客履歴に顧客ごと、車両ごとに残すオプションです。要約には明細メモを書き足せるので、「この件は来週部品が入ったら連絡」といった引き継ぎを添えられます。録音はブラウザから再生でき、スマホやタブレットでも確認できます。
お客様店長さんに、車検のついでにブレーキの音も見てほしいって話してたんですが
社員(要約を読んで)先月のお電話で伺っています。右前から音がするというお話でしたね。車検の日に一緒に点検いたします
会話は場面を説明するための例です。録音する場合は、通話の冒頭や店内掲示などでお客様にお知らせしておく必要があります。告知の文例は別記事で扱っています。
AI要約が引き継ぎを変えた点
通話録音×AI要約とは、電話の内容を自動で録音し、AIが数行の要約にして顧客履歴に残す仕組みです。録音だけでは、退職した店長が担当していたお客様の通話を後任が何十本も聞き直すことになり、現実には誰も聞きません。要約があれば、1件あたり数行を読むだけで「何の件で、何を約束したか」が分かります。日本カーネット提供資料では、メリットとして聞き逃しによる再確認の手間を減らせること、スタッフ間の引き継ぎがスムーズになることが挙げられています。ただし、要約は電話の分しか残りません。来店時の立ち話や店頭での約束は、これまでどおり人が履歴に書く必要があります。
顧客の引き継ぎ対策が要らないケースと限界
社長が1人で整備から受付まで回している工場では、退職による顧客離れはそもそも起きません。ただ、この場合も社長自身が全部を覚えておく負担は残りますし、病気や引退のときには同じ問題が起こります。家族経営でも、次の代に引き継ぐ予定があるなら早めに記録を始めておく意味はあります。
また、記録を残しても、お客様が「あの店長だから」と人柄で選んでいた分は戻りません。退職した店長が近くで独立すれば、ついていくお客様もいます。対応履歴でできるのは、会社に残ったお客様に「担当が変わって不便になった」と感じさせないことまでです。そこを割り切ったうえで、残せるものを残すのが現実的です。
属人化そのものをどう減らすかは顧客対応の属人化を解消する方法、店長に限らず電話の取り次ぎや折り返しで起きる漏れは電話の引き継ぎと折り返し漏れを防ぐ方法で詳しく扱っています。
よくある質問
- 店長が辞めると、どのくらいのお客様が離れますか。
- 業種や地域で大きく変わるため、決まった割合はありません。日本カーネット提供資料に引用されたAIDEMの意識調査では、2回目以降の利用で悪い印象を持った店について「二度と利用しない」が51.3%でした。退職直後の応対で悪い印象を与えないことが、離反を減らすいちばんの手立てです。
- 退職者の私用携帯に入っているお客様の連絡先はどう扱えばよいですか。
- 会社の業務で得た連絡先は、会社の顧客情報として扱うのが基本です。退職時に会社のシステムへ移し、私用端末からは消してもらうよう就業規則や誓約書で決めておくと揉めにくくなります。個別の判断は社会保険労務士や弁護士に確認してください。
- 引き継ぎ書と対応履歴は何が違いますか。
- 引き継ぎ書は退職時に一度だけまとめる要約で、対応履歴は日々の応対をその都度残した記録です。引き継ぎ書だけでは記憶に頼るため抜けが出ます。対応履歴が日頃からあれば、引き継ぎ書は未完了の案件の一覧だけで足ります。
- 対応履歴を残すには、自動車整備システムや整備ソフトを入れ替える必要がありますか。
- すでに使っている整備ソフトに顧客履歴を書く欄があるなら、まずはそこから始められます。整備システムを比較するときは、車歴だけでなく対応履歴を顧客と車両の両方にひもづけて残せるか、電話の着信と同時に表示できるかを確認すると、退職時の引き継ぎに差が出ます。
- 小さな工場でもCTIや通話録音は必要ですか。
- 電話が1日に数本で、社長がすべて受けているなら急ぐ必要はありません。電話に出る人が2人以上いる、店長が外出しがちで折り返しが多い、という職場から効果が出やすくなります。
出典・参考資料
- 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html - 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R07jittaityousa.pdf - 日本カーネット提供資料(おもてなしシステム 紹介資料。AIDEMビジネスマナーに関する意識調査、当社ITソリューション部調べを含む)
- 日本カーネット提供資料(おもてなしCTI 通話録音×AI要約 オプション説明)
記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。法令の解釈や個別の判断が必要な場合は、専門家または所管官庁にご確認ください。
お客様は、店長でなく会社につく。
電話・来店・SMS・見積の対応履歴を会社に残し、通話はAI要約で読めば分かる形に。おもてなし接客管理システム(整備システム・整備ソフト DREAM POWER のオプション)の資料をお送りします。
お電話:03-5256-7877平日 9:00〜12:00・13:00〜18:00







