「交換するなんて聞いていない」「いや、電話でお伝えしました」。整備工場で一度は耳にするやり取りです。どちらも嘘はついていません。社員は確かに電話で話し、お客様は確かに「交換」の意味を違って受け取っていた。それでも、記録がなければ会社は説明のしようがありません。この記事では、言った言わないのトラブルが起きやすい見積、追加整備の説明、納期の3つの場面を取り上げ、国土交通省の指導要領が求める記録と、書面、SMS、対応履歴、通話録音をどう組み合わせれば防げるのかを整理します。
言った言わないのトラブルが起きやすい3つの場面
自動車の整備や販売で言った言わないが起きる場面は、だいたい決まっています。共通しているのは、お金と日付が絡むこと、そして口頭でのやり取りが挟まることです。
| 場面 | よくある食い違い | 原因になりやすいやり取り |
|---|---|---|
| 見積 | 「この金額で全部やってくれると思った」 | 見積に含む作業と含まない作業を口頭で補足した |
| 追加整備の説明 | 「交換は了承していない」「点検だけのつもりだった」 | 作業中に電話で提案し、返事があいまいなまま進めた |
| 納期 | 「今日できると言われた」「部品待ちとは聞いていない」 | 目安で言った日付が、お客様には約束として伝わった |
中古車の販売でも、似た構図があります。国民生活センターの集計では、PIO-NETに登録された中古自動車の相談件数は2025年度に8,642件でした。最近の事例には、現車を見ずに購入した車でエアコンの故障が分かり「説明がなかった」と補償を求める相談や、納車の連絡が来ないという相談が並んでいます。何を説明し、何を約束したのか。そこが残っていないと、話は平行線になります。
言った言わないのトラブルとは
言った言わないのトラブルとは、口頭で交わした説明や約束について、お客様と会社の記憶が食い違い、どちらも根拠を示せない状態のことです。自動車の整備や販売では、見積の範囲、追加整備の承諾、納期の3つで起きやすく、いずれも金額か日付が関わります。国民生活センターによると、中古自動車に関する相談は2025年度だけで8,642件寄せられ、説明の有無が争点になった事例も含まれています。防ぐ方法は、説明した内容と、お客様の返事と、その日時を、会社として後から確かめられる形で残すことに尽きます。社員の記憶に頼っている限り、担当者が異動や退職をすると、正しかった説明まで証明できなくなります。
整備の見積と事前説明のルール
整備の見積については、法令に決まりがあります。道路運送車両法施行規則第62条の2の2は、自動車特定整備事業者の遵守事項として、点検又は整備の作業を行う事業場では、依頼者に対し、必要となると認められる整備の内容と必要性を説明し、概算見積りを記載した書面を交付するか、これを記録した電磁的記録を提供することを定めています。
国土交通省の「自動車整備事業の取扱い及び指導要領」は、この説明の進め方をもう少し具体的に書いています。依頼のあった内容を十分に確認し、初度登録年や走行距離といった使用実態、過去の点検・整備の実施状況を参考に受入点検などを行ったうえで、必要と認められる整備の内容と必要性を説明する、という流れです。つまり、何を見て、何を説明したかは、本来残しておくべき情報だといえます。
- 見積書には、含む作業と含まない作業を分けて書く。「ブレーキパッドは点検のみ、交換は別途相談」など
- 口頭で補足したことは、その場で見積書の余白か対応履歴に一文で書き足す
- お客様が迷っている項目は「保留」と書き、いつまでに返事をもらうかも残す
- 電子で見積を送ったら、送った日時と送り先を残す
整備の見積で残すべき記録
整備の見積で言った言わないを防ぐには、見積書そのものに加えて、説明した内容とお客様の返事を残す必要があります。道路運送車両法施行規則第62条の2の2第2号は、必要な整備の内容と必要性の説明、概算見積りの書面交付または電磁的記録の提供を整備事業者の遵守事項としています。現場で揉めやすいのは、見積書に書かれていない口頭の補足です。「タイヤはまだ使えますが、次の車検までは厳しいかもしれません」と言ったなら、その一文を見積書の控えか対応履歴に書き足します。これだけで、半年後に「前回何も言われなかった」と言われたとき、誰が対応しても経緯を示せます。
追加整備の説明と承諾の記録
言った言わないが最も深刻になりやすいのが、追加整備です。車を分解して初めて分かる不具合は、どの工場でも出てきます。国土交通省の指導要領は、概算見積りを交付した後に、見積金額の変更を伴う整備の必要性が新たに見つかった場合、あらかじめ依頼者の了解があるときを除き、原則として追加整備の内容と変更後の概算見積りを依頼者に連絡し、承諾を得たうえで作業を行うとしています。
さらに、その場合には事業者控えの見積書面または電磁的記録に、依頼者の承諾年月日、必要となった整備の内容、変更後の概算見積りの額を記載・記録しておくこととされています。承諾の記録は、行政の指導の中でも残すべきものとして書かれているわけです。
社員(例)点検中にブレーキのパッドが残り2ミリほどだと分かりました。交換すると見積から金額が変わります。交換されますか、今回は見送りますか。
お客様うーん、じゃあお願いします。
社員ありがとうございます。ブレーキパッドの交換を追加し、変更後のお見積をこのあとSMSでお送りします。本日10月6日の14時に承りました。
このやり取りは、説明のために作った一般的な例です。最後のひと言で、追加の内容と日時を社員の口から言い直しています。そのうえで文字にして送れば、お客様の手元にも記録が残ります。電話の「うーん、じゃあ」は、後から「迷っていただけ」と受け取られかねません。だからこそ、言い直しと文字の記録で固めます。
追加整備の承諾を記録する手順
追加整備の言った言わないを防ぐ手順は、連絡、言い直し、記録、送付の4段階です。まず、見つかった不具合と、作業した場合と見送った場合の違いを電話で伝えます。次に、お客様の返事を受けて、追加する作業と日時を社員が言い直します。そして、国土交通省の指導要領が求めるとおり、承諾年月日、必要となった整備の内容、変更後の概算見積りの額を見積の控えに残します。最後に、変更後の見積をSMSや書面でお客様にも届けます。電話がつながらないときは作業を進めず、連絡した時刻と結果を残して待つのが原則です。この4段階を担当者に任せきりにせず、誰が電話を受けても同じ手順で進むようにしておきます。
納期の言った言わないを防ぐ伝え方
納期のトラブルは、金額よりも感情がこじれやすい種類です。お客様は、その日に車が戻る前提で仕事や家族の予定を組んでいます。社員が「たぶん木曜には」と言えば、お客様の頭の中では木曜が確定します。
- 納期は「確定」と「目安」を言い分ける。「部品が水曜に届けば木曜の夕方、届かなければ改めてご連絡します」
- 目安を伝えたら、次にこちらから連絡する日時も一緒に約束する
- 延びると分かった時点で、お客様から聞かれる前に連絡する。連絡した日時と伝えた新しい日付を残す
- 中古車の納車は、書類の準備や名義変更など、店側でも読めない工程があることを最初に伝えておく
延びた連絡を電話で済ませると、ここでまた言った言わないが生まれます。電話のあとに、要点だけSMSで送っておくと確実です。納期の連絡に使える文面は、姉妹サイトの自動車業界のSMS例文・テンプレート集にまとめています。
納期のトラブルを防ぐ伝え方
納期の言った言わないを防ぐには、伝える日付が確定なのか目安なのかを、その場で言い分けることが第一です。整備では部品の入荷、中古車の販売では名義変更や書類の準備など、店側でも動かせない工程があります。そのため「部品が水曜に届けば木曜の夕方」のように条件付きで伝え、次にこちらから連絡する日時も約束します。延びると分かったら、お客様に聞かれる前に連絡し、連絡した日時と新しい日付を記録します。電話で伝えた内容をSMSで要点だけ送り直しておけば、お客様の手元にも同じ情報が残り、記憶違いが起きにくくなります。担当者が休みの日にお客様から問い合わせがあっても、記録を見れば別の社員が同じ日付を答えられます。
言った言わない防止に使える記録の方法
記録の手段には、それぞれ得意と苦手があります。1つで全部を賄おうとせず、場面ごとに組み合わせるのが現実的です。
| 記録の手段 | 向いている場面 | 限界 |
|---|---|---|
| 見積書・作業指示書 | 作業の範囲と概算見積り | 口頭の補足は書き足さない限り残らない |
| SMS・メール | 追加整備の承諾、納期の連絡 | 電話で話した細かいニュアンスは伝わらない |
| 対応履歴(社内の記録) | 誰が、いつ、何を説明したかの経緯 | 書く人が書かなければ残らない |
| 通話録音 | 電話での説明と返事そのもの | 聞き直す時間が取れず、ふだんは使われにくい |
対応履歴は、言った言わないを防ぐ記録の中心になります。見積書やSMSは、それ単体では「なぜそうなったか」が分かりません。対応履歴に「10月6日14時、パッド交換の追加を電話で提案、承諾。変更後の見積をSMS送付」と一行あれば、ほかの記録をつなぐ糸になります。書き方の例は対応履歴とは(何を・どう残すか)にまとめています。記録が担当者の頭の中から会社に移ると、誰が電話に出ても同じ説明ができます。この考え方はお客様は店長でなく会社につくで紹介しています。
言った言わないを防ぐ記録の組み合わせ
言った言わないのトラブルを防ぐ記録は、見積書、SMSやメール、対応履歴、通話録音の4つを場面に応じて組み合わせるのが現実的です。見積書は作業範囲、SMSはお客様の手元に残す確認、対応履歴は社内で経緯をつなぐ記録、通話録音は電話での説明そのものを残す役割を持ちます。なかでも対応履歴は、ほかの記録が「いつ、誰の判断で、何のために」作られたのかを示す糸になります。どれか1つに頼ると、その手段の苦手な場面で穴が空きます。たとえば見積書だけでは口頭の補足が残らず、通話録音だけでは聞き直す時間が取れません。まずは対応履歴に一行書く習慣から始め、足りない場面に他の手段を足していく順番がおすすめです。
通話録音とAI要約で言った言わないを防ぐ
通話録音は、言った言わないの最後の拠り所になります。ただ、録音はよくある機能でも、社員の通話をあとから聞く時間は実際にはほとんどありません。1件数分の通話でも、1日に何十件となれば聞き直すのは無理です。結局、聞かれるのはトラブルが起きたときだけ、という会社が多いのではないでしょうか。
整備システム・整備ソフト DREAM POWER のオプション「おもてなしCTI 通話録音×AI要約」は、着信と発信を自動で録音し、AIが通話を要約してテキストにします。要約は顧客ごと、車両ごとの顧客履歴で確認でき、録音はインターネット上(クラウド)に保管されて、ブラウザから再生できます。日本カーネット提供資料では、この機能で解決したい悩みとして、まさに「言った・言わない」のトラブルが挙がっています。聞かなくても、数行読めば何を話したかが分かる。録音が初めて日常で使える記録になります。仕組みの詳細は通話録音×AI要約と、通話録音は聞かれていない問題とAI要約で紹介しています。
通話を録音するなら、お客様に録音していることを伝える告知が要ります。文例は通話録音の告知文例と個人情報の扱いにまとめました。また、要約は要点をまとめたものなので、金額や日付など争いになりやすい部分は、必要に応じて録音そのものを再生して確かめてください。対面での説明は録音の対象外なので、来店時の約束は従来どおり書面や対応履歴に残します。通話録音×AI要約は、おもてなしCTI本体の契約が前提のオプションで、無料のお試し期間はありません。
通話録音とAI要約の役割
通話録音とAI要約は、言った言わないのトラブルで電話のやり取りを確かめるための記録です。録音だけの場合、聞き直す時間が取れず、実際に再生されるのはトラブルが起きたときに限られがちでした。AIが通話を要約してテキストにすると、顧客や車両の履歴を開いた社員が数行読むだけで、前回何を説明し、お客様がどう答えたかを把握できます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER と連携するおもてなしCTIの通話録音×AI要約では、要約に明細メモを足して引き継ぐこともできます。一方で、録音の告知が必要なこと、対面の会話は残らないことは押さえておきましょう。
よくある質問
- 言った言わないのトラブルになったら、まず何をすればよいですか。
- 社内に残っている見積書、SMS、対応履歴、録音を集め、いつ何を説明したかを時系列に並べてください。記録がある部分とない部分を分けて、お客様には記録のある事実から説明します。記録のない部分を社員の記憶だけで言い切るのは避けたほうが安全です。
- 追加整備の承諾は電話だけでも大丈夫ですか。
- 国土交通省の指導要領は、追加整備は原則として内容と変更後の概算見積りを連絡し承諾を得たうえで行い、承諾年月日などを控えに残すとしています。電話で承諾をもらったら、その日時と内容を記録し、変更後の見積をSMSや書面でもお送りしておくと食い違いが起きにくくなります。
- 通話録音があれば言った言わないは起きませんか。
- 電話でのやり取りについては確かめる手段になります。ただ、来店時の会話は残りませんし、録音を聞き直す時間が取れなければ、すぐには使えません。AI要約で日常的に読める形にし、対面の約束は書面や対応履歴で補うのが現実的です。
- 1人で営んでいる工場でも記録は必要ですか。
- 受けた人と説明した人が同じなので、社内の引き継ぎのための記録は少なくて済みます。ただ、お客様との言った言わないは人数に関係なく起きます。見積の補足や追加整備の承諾だけでも、日付つきで残しておくと安心です。
- 自動車整備システムや整備ソフトを選ぶとき、言った言わない防止の観点で何を見ればよいですか。
- 見積や伝票、SMSの送信が、顧客や車両の履歴に自動で残るかを確かめてください。説明の経緯を後から1か所でたどれるかが分かれ目です。整備システムの比較やおすすめの整備ソフトは整備システム比較の姉妹サイトも参考になります。
出典・参考資料
- 道路運送車両法施行規則 第62条の2の2(自動車特定整備事業者の遵守事項)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074 - 国土交通省「自動車整備事業の取扱い及び指導要領」(別添)第2節 第3の2 定期点検整備作業の依頼者への説明及び概算見積りを記載した書面の交付
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001899927.pdf - 国民生活センター「中古自動車(各種相談の件数や傾向)」2026年7月31日更新
https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/ucar.html - 日本カーネット提供資料(おもてなしCTI 通話録音×AI要約 オプション詳細)
- 日本カーネット提供資料(おもてなし接客管理システム マニュアル)
記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。法令の解釈や個別の判断が必要な場合は、専門家または所管官庁にご確認ください。
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